コンタクトレンズ

コンタクトレンズの種類

レンズは大きく分けて、ハードレンズとソフトレンズに分かれます。
字のごとく硬いレンズがハードレンズで柔らかいレンズがソフトレンズです。
イメージとして、ハードレンズはプラスチック、ソフトレンズは厚手のビニールのような感じです(あくまでもイメージです)。そして、ソフトレンズは、大きく3つに分かれます。1日使い捨てレンズ(ディスポーザルレンズ:1日間使用、再使用しないレンズ)、使い捨てレンズ(正確には頻回交換レンズ:2週間使用、定期交換レンズ:1ヶ月使用)、従来型(コンベンショナルレンズ:長く使うタイプ)。さらにそのなかで特殊なレンズとして、乱視用(トーリックレンズ)、遠近両用レンズ、さらに、カラーレンズや瞳を大きく見せるディファインレンズもあります。そして、あまり一般的ではないですが1週間連続装用が可能なレンズもあります。

ハードレンズ

ハードレンズの利点は酸素をたくさん通すことと、小さいので動くことにより涙の交換がより自然に近い点があげられます。また、細菌などに強いことと、硬さを生かして、軽い黒目の歪み(角膜乱視)を取ることもできます。欠点は、硬いのでゴロゴロしてしまうことや、小さいので動きが気になる場合や、落ちやすい点があげられます。

落ちやすいので激しい運動に向かないのと、特に土ぼこりが立つ外のスポーツにはあまりおすすめできません。ほこりが入るととても痛く涙がでます。しかし、この点はハードレンズの利点でもあり、ゴミが入ったことがわかりレンズを外しますので黒目の傷がひどくなりにくいです。逆にソフトレンズはゴミが入ってもわかりにくいので傷が重症化することもあります。

レンズの寿命は1年半から2年(個人差はあります)が安全に使える期間でレンズの価格は1枚で1万円から2万円です(近隣の販売店価格。両眼で1年半から2年で2万円から4万円の計算になります)。ケア用品は毎月1300円位かかります。

レンズ代金も含めた月の費用は2000円から4000円位になります。

ソフトレンズ

1日使い捨てレンズ

1日使い捨てレンズは、最も安全性の高いレンズですし、色々な意味で最もおすすめのレンズです。朝つけて、夜にはずして捨ててしまうレンズで再使用はできません。利点は毎日交換するので、常に清潔を保てる点と、洗浄や消毒などのお手入れが不要な点です。花粉症などのアレルギーがある場合には最も負担の小さいレンズになります。レンズの性能としては特に欠点らしい欠点はないのですが、レンズの枚数が多くなりますので、レンズ代が最も高くなるのが大きな欠点です。他には、若干乾きに弱い点と、度数などの種類が少ない点があげられます。

1日使い捨てレンズは、機会使用といって、何かの行事の時だけにするとか、海に行く時だけにするとか、時々しか使わない場合にはもっとも安全で経済的なレンズになります。レンズが一つ一つパック詰めにされており、使う時に初めて開封して使うためとても清潔ですし、使用期限も2〜3年程度はあるのが普通ですので、長期に間があいても次に使うときまで保存可能だと思います。また、旅行の際などでは洗浄液を持たなくても良いですし、旅先で紛失しても予備を持っていけば対応可能です。もちろん、他のレンズと1日使い捨てレンズを使い分けることも可能ですので、旅行用だけに作成される方も少なくないです。

また初めてコンタクトレンズをする場合には、1日使い捨てレンズがおすすめです。コンタクトレンズに慣れるまでの期間は、紛失してしまったりなくしてしまう可能性が高いです。例えば2週間交換レンズを破いてしまうと、2週間分のレンズを失うことになりますが、1日使い捨てレンズの場合は1日分で済みますので経済的です。また、最初は2日に1回装用するなど、頻度の調整も可能になります。

レンズの寿命は1日です(洗浄しても使えません。感染症などになる危険性があります)。 レンズの価格は1箱30枚入り(片眼分)で2000円から3000円位です。 (毎日使う場合は1ヶ月両眼で4000円から6000円位ですが、1週間に1日しか使わない場合は片眼一箱で半年位持ちますので1ヶ月700円から1000円位になります)

ケア用品代がかかりませんので、毎日使うとすると月の費用は4000円から6000円位になります。

2週間~1ヶ月使い捨てレンズ(頻回交換レンズ、定期交換レンズ)

私は最もバランスの取れたレンズだと思います。朝つけて夜はずして、洗浄後、夜中に消毒(+蛋白除去)をして、次の日も使い、2週間から1ヶ月経過すると捨てるレンズです。利点は、使う期間が短いですので、レンズの汚れや傷などが問題になりにくい点と、最近はシリコンハイドロゲルという酸素をたくさん通して乾きにくいタイプのレンズがあること、種類も多いので自分に合ったタイプが見つかりやすいことがあげられます。欠点は、一日使い捨てレンズよりは汚れが問題になる点があげられます。

レンズの寿命は2週間か1ヶ月です(使用した日数ではなく、開封してからの期間ですので注意が必要です)。レンズの価格は1箱3か月分(片眼分、2週間は6枚入り、1ヶ月は3枚入り)で2000円から4000円位です。

ケア用品は毎月1200から1500円位かかりますので、月の費用は概ね2000円から3000円位になります。


従来型ソフトレンズ(コンベンショナルレンズ)

最近では、使い捨てレンズの利点が多いため使う方が減っておりますが、利点は特殊な乱視や遠視などの度数の種類が多いことです。しかし、長く使うと汚れやレンズの劣化が問題になりますので、病気の発生率は高い部類に入ります。慎重な使用と、長くとも1年半位での交換が大切です。紛失や破損した場合の被害が大きいのも欠点です。

レンズの寿命は1年から1年半です(私は1年での交換をおすすめしております)。
レンズの価格は1枚10000円から15000円です。
ケア用品は毎月1500から1800円位かかります。

月の費用は2000円から3000円位となります。

特殊なレンズ

乱視用

乱視がある方は、乱視用のレンズを使います。基本的に多くの方に乱視があることが多いですが、特に問題にならないような軽い場合は矯正しません。近視用のレンズで十分に視力が出ない場合に初めて乱視用に切り替えます。それは乱視用のレンズに欠点があるからです。

乱視用のレンズは向きがあり、レンズが回転してしまうことにより、見え方に影響がでます。レンズと目の乱視の向きが合っている場合は見やすいですが、少しでもレンズが回転してしまうと見にくくなります。もちろん、レンズは自動的に正しい向きを向くように設計されておりますが、相性の問題で安定しない場合もあります。そのような場合はレンズを調整するか他のレンズに変更します。もう一つの欠点は、近視用(遠視用)のレンズよりも高価な点です。

また、必ずしも自分に合うレンズが製造されていない場合もあります。 基本的に、乱視を矯正しないと乱視が進むとか、そういう影響はありませんので、あくまでも見え方や疲れ具合を相談しながら乱視用にするかを決めていきます。

乱視用のレンズは一般的にはソフトレンズをさしますが、ハードレンズでも乱視用があります。ハードレンズはレンズが硬いので、角膜が原因の乱視は通常のレンズで矯正できてしまいます。少しだけゆがんだ黒目に硬いハードレンズをのせることにより、黒目の形がレンズの形に近づき、ゆがみが取れてしまうイメージです。しかし、乱視が残る場合もありますので、その場合にはハードレンズの乱視用を使います。

遠近両用レンズ

めがねに遠近両用があるようにコンタクトレンズにも遠近両用があります。
コンタクトレンズとめがねの違いとして、どちらも何かを見るときに視線を移動させますが、コンタクトレンズはレンズ自体が動きますので、それ程視線を大きく動かさなくてもよいといわれております。さらに、同時視タイプのレンズだと、視線を移動させなくても遠くも近くもピントを合わせることができます。イメージとしては、網戸越しに外を見る時に、網戸についた虫も見ることができますし、網戸の外の様子も見ることができるような感じです。視線を移動せずに脳で必要とする像を選ぶことで、遠くと近くを見ることができるようになります。
利点も多いですが、小さなレンズに複数の度数を入れることになりますので、見え方の鮮明感や明るさは通常のレンズよりも劣る可能性があるのと、レンズの価格が高い点が欠点です。めがね同様、慣れが必要な点もあげられます。
遠近タイプはソフトレンズもハードレンズも製造されており、最近では1日使い捨てレンズの遠近両用レンズもあります。慣れや実際の生活で使ってみることが大切ですので、まずはお試しをしてみることをおすすめします。

カラーレンズとディファインレンズ

コンタクトレンズを見つけやすくするために色がついているものもありますが、ここでは虹彩(瞳孔の外側、黒目の内側)の色を変えるためのレンズを指します。一般的にはおしゃれ用ですが、虹彩の病気の方に用いられることもあります。

レンズには人体に対して安全な着色剤を使用していることが大切です。一般的に眼科医院で処方可能なレンズは、厚生労働省の認可を受けたものに限られると思いますので安全上問題はないですが、新聞でも問題になりましたが、雑品扱いの通販などで購入可能なレンズの中には厚生労働省の認可を受けていないレンズも含まれており、眼科医の立場からはあまりおすすめできません。

認可がないレンズは自己責任で使うことになります。有害な着色剤を使用しているものや着色剤が溶け出てくるトラブルも新聞等で報道されております(小話20参照)ので注意が必要です。

瞳を大きく見せるレンズも数種類あります。瞳を大きく見せることは、生物学的に魅力的に見せる効果があるようです(小話14参照)。レンズが黒目の中心にきちんと安定するように選ぶのが大切です。また、カラーレンズも同様ですが、着色部分は酸素の透過性が低いといわれておりますので、透明なレンズよりも装用時間を短くしたほうがよいです。


連続装用レンズ

寝るときも連続して装用するのが連続装用で、日本では最長1週間までと決められております。これに対して、朝つけて夜外すのが終日装用で、一般的な使い方です。連続装用の利点は、着け外しが不要な点があり、例えば自衛隊の方が演習などで泥だらけの指でレンズを外せない場合や、消防士、警察官など(医師、看護士も含まれますね)、仮眠状態からすぐに職務につかなければいけない方には便利なレンズです。

しかしながら、連続で装用するということは目にかかる負担がもっとも大きいです。基本的には洗浄もしませんので汚れの蓄積も予想されます。もちろん、現在日本で認可を受けているレンズは、そのような問題もクリアされておりますので安全に装用できる前提ですが、実際のところ角膜炎や結膜炎が起こりやすいのも事実です。

先の利点がありますので、そのような職種の方でも通常は終日装用して、勤務のない時は目を休めるのが大切だと思います。以前の連続装用は、一度外すと捨てなければいけませんでしたが、シリコーンタイプの最新の連続装用レンズは、外して終日装用で使用も可能で、他のレンズのように洗浄消毒ができます。

連続装用のコツは、朝起きた時の乾きが強いため、起きたらすぐに点眼を行うことと、ゴロゴロ感が出てきた場合は、洗浄できるレンズは洗浄することが大切だと思います。いずれにしても、無理はせずに調子が悪くなってきたら、外して目を休めることが重要です。

眼科医の中でも否定的な意見が多い連続装用レンズですが、私も現在のレンズではあまりおすすめはしておりません。しかし、レンズの性能が飛躍的に進化して、安全な連続装用が可能になれば、最も期待のもてるレンズになると思います。例えば、一年間(あるいはそれ以上)まったくはずさなくても大丈夫で、つけている感じがまったくない抜群の装用感で、感染や角膜炎などの病気もでない、そんな夢のようなレンズができるかもしれません。もちろん今のレンズでそのような使い方をするとほぼ100%病気になります。技術の進歩を期待したいですね。