2011年03月20日No.55 ドライアイとコンタクトレンズ 問題点と検査法
とても一般的なドライアイですが、日本では約1200万人が罹患しているといわれており、これはコンタクトレンズ装用者の数とほぼ一致します。では、
「ドライアイの方はコンタクトレンズをしてはいけないですか?」
以前は、コンタクトレンズでさらに乾きが悪化するため、「できません」というのが答えでしたが、現在は重症の場合を除いて、レンズの選択や調整、充分な経過観察と管理のもとでは可能であると考えます。
コンタクトレンズの診察の中で、ドライアイとアレルギー性結膜炎は、二大問題とされており、多くの方が悩まれております。ドライアイがあると、レンズが汚れやすくなり、アレルギー性結膜炎になりやすく、両者が同時に起こることもめずらしくありません。
乾燥感の訴えはとても多く、ソフトレンズ装用者の約8割、ハードレンズ装用者の約7割に程度の差はありますが、乾きを感じているという報告もあります。このような乾き感だけが問題であれば、我慢するというのも一つですが、問題は、白目に充血(結膜充血)や黒目に角膜炎(角膜の傷)が起こることにあります。
*コンタクトレンズ装用時におけるドライアイによる問題点
ハードレンズ
ハードレンズ装用の方で充血している方を見ると、一つのパターンがあります。黒目の真横に充血が強く出ております。黒目を時計に例えると3時と9時の部分に角膜炎と充血が起こります。これは3-9ステイニングと呼ばれており、とてもよくみかける異常です。この状態の場合はドライアイを疑います(後日、ハードレンズとドライアイという小話で原因や対策について詳しく説明します)。
ソフトレンズ
ソフトレンズ装用の方は、充血はありませんが、レンズを外した後にしみる感じがしたり、痛みが出たりします。そのような症状は角膜炎(黒目の傷)で起こります。無症状でも、角膜炎が起きていることもめずらしくなく、診察で見つかることも多いです。特徴として、角膜炎の位置が瞳孔よりやや下の部分に多発し、これはスマイルマークと呼ばれ、とても一般的です。この部分に角膜炎がある場合は、ドライアイを疑います(後日、ソフトレンズとドライアイという小話で原因や対策について詳しく説明します)。
コンタクトレンズ診療の中で、ドライアイが見つかることも多いです。上記のような症状以外にも診察中に観察するポイントがあります。以下で紹介します。
*検査と観察点
ドライアイの原因は涙の量と質に分けられます。コンタクトレンズ診療中に角膜の状態やレンズの状態を確認しますが、それと同時に、観察しているいくつかのポイントがあります。
1.涙液メニスカス
涙液メニスカスとは下の図のように角膜と眼瞼(まぶた)の間に涙が貯まっており、横から見ると三日月状になっている部分を言います。この部分には眼表面の涙の75-90%が貯まっているといわれており、涙の量を確認するのにとても適しています。この部分の涙の量が少ない場合はドライアイを疑います。
2.BUT
涙液メニスカスが涙の量をみるポイントとすると、BUTでは涙の質を観察することができます。時々、診察中に涙を染めることがありますが、その時に、目を開けたままにしてもらい、涙の蒸発する状態を観察します。通常、涙はまばたきのたびに目の表面を覆い、10秒以上は覆い続けます。しかし、涙の質に問題があり蒸発しやすい状態になると、5秒以下に短縮してしまいます。涙の量が正常でも、蒸発が早ければ、結果として涙が不足しドライアイになります。部分的に涙の層が破綻し、涙がなくなる部分(ブレイクアップ)が起こるまでの時間をBUT(tearfilm breakup time:涙液層破綻時間)といいます。
3.涙の汚れ
女性の方の場合、お化粧が涙に浮かんでいることがあります。アイメイクやまつ毛のマスカラが原因だと思います。涙の状態を不安定にし、乾燥をひき起こしたり、コンタクトレンズを汚してしまう可能性があり、注意が必要です。
4.マイボーム腺
涙の質は、マイボーム腺から分泌される脂分が減ると悪化します。脂の分泌が多いほうが乾きにくく、良い涙とされています。マイボーム腺はまぶたの縁に並んでいます。この部分に目詰まりや炎症がないかを確認します。
5.シルマーテストと錦糸法
一般的なドライアイのテストでは、シルマーテストと錦糸法と呼ばれるものがあります。涙の量を測る検査です。厳密には両者の結果の意味は異なりますが、シルマーテストは紙を、錦糸法は糸を下のまぶたの外側にひっかけて、一定時間の間に出た涙の量を計測します。
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