2011年08月20日No.60 コンタクトレンズによる角膜感染症について(その2)
コンタクトレンズが原因で、かゆくなる「アレルギー性結膜炎」になったり、目がしみる「びまん性表層角膜炎(黒目の傷)」などの病気になることは、コンタクトレンズ診療の中でそう珍しいことではありません。しかしながら、コンタクトレンズが原因と考えられる細菌などの病原菌による感染症は、頻度は少ないですが、症状が重篤であったり、黒目に濁りを残すなどの後遺症の問題があり、非常に注意が必要です。中でも、角膜(黒目)に病原菌が感染する角膜感染症は重症な病気の一つです。今回の小話は、コンタクトレンズが原因で起こる角膜感染症のうち細菌が原因のものについて書いていこうと思います。
コンタクトレンズが原因の細菌性角膜感染症
原因
細菌感染というと、他の人から「うつる」ことをイメージしがちですが、ほとんどの角膜感染症は人にうつるものではありません。自然界にいる細菌や、皮膚などに付着している細菌が原因となります。そもそも、人間の体内にもたくさんの細菌が生息しており、大腸菌などはその代表です。お互い共存共栄の関係が崩れたときに、感染症として問題になります。コンタクトレンズが原因の角膜感染症はいくつかの代表となる細菌がいます。例えば、黄色ブドウ球菌や緑膿菌と呼ばれるものです。

多くの感染はレンズの汚れが原因の不衛生な状態によるものが多く、洗浄が不十分であったり、決められた期間以上の使用により細菌が繁殖しやすい状態になっていることが多いです。特に、1日使い捨てを洗浄して使用する話を聞きますが、そもそも洗浄することが想定されていないレンズなので、洗浄可能なレンズのように汚れが落ちないことに注意が必要です。上手な例えかわかりませんが、キャンプ用の使い捨ての紙皿を洗って何度も使うようなものです。そもそも洗うことが想定されていませんので、汚れがとれないことや形を保てないこと、とても不衛生なことがイメージできると思います。また、コンタクトレンズのケースの汚れも原因となります。汚れたレンズケースから細菌が見つかることがあります。
症状

最も多い症状は充血だと思います。それも、毛様充血といって角膜の周りのみが強く充血するタイプとしてみられるのが特徴です。また、感染した場所は白くにごることが多いです。医学的には浸潤(しんじゅん)と呼び、強い炎症が疑われます。大きいと、ご自身で鏡で白い点として確認することができる場合もありますが、そのような場合は仮に感染でない場合も治療が必要ですので放置せずにすぐに眼科を受診しましょう。他に、いわゆる「めやに」(眼脂)も多量にでることもあり、ひどいと上下のまぶたがくっついてしまい、目が開かない状態になります。まぶたの脹れや目の痛み、まぶしさ、涙が止まらないなども症状として多く、もちろん見にくいという視力低下も起こります。症状は程度によりすべて出現するわけではないので、一つでもあるようでしたら放置せずにすぐに診察を受けましょう。
治療(予後)
細菌による角膜感染症の場合は、抗生物質の治療が有効です。点眼を基本として、眼軟膏や内服薬、重症の場合は点滴を行うこともあります。点眼薬の種類も細菌の種類によって変わり、複数の点眼薬を併用することもあります。回数も重症の場合は、1-2時間ごとにして、お薬の濃度を少しで高めに保つ必要があります。コンタクトレンズが原因の場合はもちろんのこと、コンタクトレンズが原因でない場合も、レンズの装用は中止となります。レンズの細菌がさらに感染の原因になったり、治癒が遅くなる危険性があるからです。
感染が落ち着くと、充血や眼脂、痛みやまぶしさはなくなりますが、角膜の中央部に混濁が残ると、視力が回復しないこともあります。この点がもっとも問題で、少しでも混濁を残さないためには、感染が重症化する前に、早めの的確な治療を行うことが必要になります。そのため、異常を感じたらためらわずに眼科を受診することが大切なのです。
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