院長の小話

2012年09月20日no.73 ドライアイについて(その4)「VDT症候群とドライアイの治療」

1.VDT症候群

 ドライアイと関連性の高い病気としてVDT症候群があります。VDTはVisual Display Terminalの略で、画像表示端末という意味で、パソコンやテレビ、携帯電話などのことです。パソコンや携帯電話を操作すると目が乾くという訴えをよく耳にしますが、VDT症候群の一つの症状と考えられます。目が乾く理由は、画面を見ることに集中し、瞬きの回数が極端に減ることが原因です。瞬きが減るということは目が開きっぱなしになり、涙の蒸発が多くなり目が乾燥します。VDT症候群の他の症状として、視線を激しく移動することで目の疲れが出たり、長時間同じ姿勢を続けることで肩こりをはじめとした体の不調を来たすこともあります。ひどくなると、自律神経障害やイライラなどの精神の症状を招くこともあり注意が必要です。

 ドライアイの予防としては、瞬きを減らさないように、意識的に瞬きを行うこと、涙を補うために点眼を行うことが有効だと思います。また、上目目線だと上のまぶたが必要以上に挙がり、上下のまぶたの間が広くなり、目が乾きやすくなりますので、やや下目目線になるようにイスの高さや画面の高さを調節すると良いと思います。

2.ドライアイの治療
null

 ドライアイの治療は内科的治療と外科的治療に分かれます。具体的には、点眼治療と涙点プラグ治療です。点眼治療は、ドライアイが涙が足りない病気ですので、不足分を補ってあげる治療がメインになります。その場合に、涙の主成分である水分(涙と同じ濃度のうすい塩水:人工類液)を補うのがメインですが、作用時間は5分程度といわれており、すぐに目が乾いてしまう問題があります。そこで、潤い時間を延ばすためのヒアルロン酸を配合した点眼薬が最も多く使用されております。

null

 ヒアルロン酸の点眼がドライアイに有効なのは、ヒアルロン酸の持つ水分を保つ作用です。赤ちゃんの肌がみずみずしいのは、このヒアルロン酸が多いからです。いわば、水をたっぷり吸うことができるスポンジのような役割です。ドライアイの治療にヒアルロン酸点眼を使うことで、長時間涙液を保ち、目が乾くまでの時間を延ばすことができます。また、点眼薬として15年以上も前から使われおり、信頼性や安全性はある程度確立されていると思います。現段階での、ドライアイ治療のファーストチョイスと言っても良く、多くの施設で、まずヒアルロン酸の点眼を処方するケースが多いと思います。まれですが、重症のドライアイの場合は、目の表面の少ない涙を吸い上げてしまい、調子が悪くなる報告もあります。できれば、スポンジに吸わせる水分である涙を人工涙液で補給すると、さらに効果的だと思います。

null
null

 長年、ドライアイの治療は人工涙液と、ヒアルロン酸の点眼が治療のメインでしたが、ここ数年で2種類の新しい点眼薬が発売になりました。それぞれ来月と再来月の小話で詳しく説明する予定ですが、これらは、ムチンと呼ばれるネバネバ物質を増やすことで乾きを改善する効果があります。ムチンは、納豆やオクラのネバネバの原因物質で、魚の表面がぬるぬるしているのもこのムチンです。このネバネバやぬるぬるとドライアイ、まったく関係なさそうですが、実はとても関係があります。次回の小話で詳しく説明しようと思います。

 もう一つの治療である外科的治療は、当院では行っておりませんが、涙の排水口にあたる涙点に栓(プラグ)をしてしまうものです。

Category :
院長の小話