院長の小話

2012年12月20日no.76 シリコーンレンズについて(その1)

 最近は、ソフトの使い捨てコンタクトレンズの大部分がシリコーンハイドロジェルレンズ(以下シリコーンレンズ)です。知らずに使っている方も多いと思いますので、少し説明したいと思います。

1.シリコーンハイドロジェルレンズについて

 従来のソフトコンタクトレンズは主に「ヒドロキシエチルメタクリレート (HEMA)」という素材が使われておりました。ハードレンズに比べ、とてもやわらかく装用感は良いのですが、角膜への酸素を運ぶの能力が低い欠点がありました。そこで、酸素の運び手であるレンズに含まれる水分を多くして酸素透過性を上げることが考えられましたが、水分を多くすると、蒸発して失ったレンズの水分を補うために涙を吸い上げてしまうため乾きやすくなる問題がありました。また、レンズ厚を薄くすることで酸素を通しやすくすることも行われておりますが、破れたり欠けやすくなり、強度に問題が起こる傾向がありました。

 以前からシリコーンハイドロジェルという素材が酸素を通しやすいことは知られておりましたが、水との親和性が低く水をはじいてしまう問題(疎水性)と硬くて装用感が悪い問題があり、コンタクトレンズの実用化には至っておりませんでした。

null

 しかし、2004年にこれらの問題を解決して、O2オプティクスというレンズが日本で発売になりました。私の院長の小話3でも紹介させていただきました。その後アキュビューアドバンス、オアシスが発売になり、現在、当院では、シリコーンレンズの処方の患者さんの方が従来のHEMAタイプのレンズよりも多くなってきております。

2.通常のレンズとの違い

 最も大きな特徴は、酸素透過性の高さです。従来のHEMAタイプのレンズと比べて約5-6倍の酸素透過性があり、アキュビューアドバンスは、目に何もつけていないときを100%とすると97%もの量の酸素が角膜に届くといわれております。もう一つの特徴は、乾きにくさです。ソフトレンズは、レンズに含まれる水分量が多いほど乾きやすく、また汚れやすいといわれております。シリコーンレンズは水分を介さずとも酸素を運ぶことができますので、レンズの水分量を減らすことができ、乾きにくいレンズといわれております。

3.シリコンorシリコーン?
null

 約5年前の小話でもお伝えしましたが、正解は「シリコーン」です。シリコーン(silicone)は、ケイ素を構造に含む樹脂です。オイルやゴムにもなっています。原料はケイ素で、地球上で酸素についで2番目に多く存在する元素で、岩石や土の主成分です。シリコン(silicon)はシリコンバレーやシリコンウェーハで有名ですが、ケイ素の純度を99.999999999%(イレブンナイン)にまで高めたもので、ほぼケイ素だけでできています。まったく同じケイ素から作られますが、シリコーンとシリコンはまったく別物です。

次回の小話で現在一般的に処方可能なシリコーンレンズについて説明する予定です。

Category :
院長の小話