院長の小話

2013年09月20日no.85 近視について(その2)近視とめがね

 近視について説明しておりますが、めがねについて診療の中で良く説明する2点について書こうと思います。

(1)めがねをかけると近視がすすむのですか?

 めがねに関することで、良く聞かれる質問に「めがねをかけると近視が進むのですか?」というのがありますが、私はいつも「めがねをかけたことが原因で進むわけではないです」と答えるようにしています。内容的には似ていますが「いえいえ、近視は進みません」と答えてしまうと、きっと誤解を招くと思います。実際には、近視は進んでいくことが多いからです。しかし、それは、あくまでも成長とともに進んでいるのであって、めがねをかけてもかけなくても進んだものとして考えるのが正しいと思います。
 そもそも、めがねをかけ始める時は、近視が進んで見にくくなった時です。それは、まさに近視が進んでいる真っ最中なので、めがねをかけた後も、多くの場合は同じように進んでいくことになります。反対に「めがねをかけると近視の進行が止まる」という噂もあります。これは、その人の近視の進行が、たまたまめがねをかけた時に止まっただけのことだと思います。めがねに近視を進ませる効果がないように、近視を止める効果もないと考えられているからです。結論的には、めがねをかけると近視が「進む」わけでも「止まる」わけでもないというのが通説だと思います。この点について、ヒヨコの動物実験ではめがねをかけることで度によって近視化(近視がすすむ)したり、遠視化(近視が軽くなる)したりする論文があります。先の結論と一見矛盾するような結果ですが、詳しくは次回の小話で説明しようと思います。

(2)強いめがねは良い眼鏡?

 めがねに関して、もう一つお伝えしたいことは、強すぎる眼鏡は目に良くないということです。医学的には過矯正といい、字のごとく矯正し過ぎです。強い眼鏡をかけると遠くの細かいものが見やすくなると誤解しがちですが、必ずしもそうではありません。視力は、屈折異常だけではなく、様々な要素で決まります。また、眼鏡やコンタクトレンズで完璧に矯正できるわけではなく、多少のボケが残るのが普通です。よって、めがねを強くしたからといって、皆さん全員が視力2.0になるわけではないです。
 通常は1.0以上の視力が出ていれば、日常生活に不自由はないと考えられ、車の運転も問題なく安全に行えると考えられています。逆に、2.0まで見えたからといって、それほど何か生活上で便利かどうかが疑問です。特殊な仕事で遠くの細かいものを見る場合は別として、通常の生活の中で、それほどの視力は必要ないと考えられています。さらに、矯正が強いと近くを見るときに、余計に目の筋肉を働かせてピントを合わせなければならず、疲れの原因にもなります。明らかに強すぎるめがねは、遠くを見る時にも、余計に強い度数分を打ち消すために、目であたかも近くを見るように筋肉を働かせ、遠くにピントを合わせます。近くを見るときは、さらに筋肉を働かせなければならず、常に筋肉が緊張状態になります。遠くを見ている時も、目は近くを見ている状態になり、それは近くの作業を常時行っているのと同じになり、近視が進行する原因になる可能性もあります。悪いことばかりなので、度数が強いめがねは適正な度数に調整すべきだと思います。

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