院長の小話

2014年01月20日no.89 近視について(その6)近視進行予防の新しい方法

 前回までの小話で近視について説明してきましたが、現在、この近視をなんとか進行させないために色々な方法が編み出されております。オルソケラトロジーは実用化されておりますが、それ以外の今後実用化される可能性のあるものについて説明しようと思います。ただし、どれもまだまだ新しい治療法ですので、効果についてはこれからわかってくる面もあると思います。患者さんとの相性もあると思いますので、もし実際に治療される場合は、担当の医師と十分相談の上、行ってください。ちなみに駅前北村眼科ではオルソケラトロジーも含め、今回の小話で説明する治療法は、どれも行っておりません。

1.オルソケラトロジー

 オルソケラトロジーは、寝ているときに特殊なハードコンタクトレンズをすることによって、起きている日中はコンタクトレンズをしなくても、良好な視力が得られる治療法です。基本的に、オルソケラトロジーは一時的に角膜を矯正することによって、裸眼視力を改善するもので、治療を中断すると、もとの状態に戻るのが一般的です。しかしながら、1960年頃からオルソケラトロジーによる近視抑制は研究されており、現在に至るまでいくつかの有効な報告があります。作用機序として、網膜の周辺部の遠視側への焦点ずれが近視を進行させる考えをもとに、焦点をずらさないような矯正を行って、近視の進行を抑制しようとする試みです。現在、外国で臨床試験が行われており、その結果を待っているところです。

2.遠近両用めがね

 学童期において、多焦点眼鏡(遠近両用めがね)は通常の単焦点眼鏡に比べて、近視進行抑制効果と眼軸長伸長抑制効果があるとする報告があります。

 これは、近くを見るときに、筋肉を使ってピントを合わせますが、その時に一瞬焦点が網膜後方へずれ、ボケが網膜上に生じます(調節ラグ)。これが近視の進行の原因である眼軸長を伸長させる引き金になるとの考えのもと、近くを見るときに別の屈折率のレンズを使うことが有用と考えられました。近視の進行を抑制する効果の報告もありますが、遠近両用めがねをうまく使いこなせるかという問題もあります。

3.軸外収差抑制眼鏡、コンタクトレンズ

 かなり難しい話が続いており申し訳ありません。オルソケラトロジーでご紹介したように、網膜の周辺部の遠視化が近視の進行を引き起こすとの考えから、周辺部の遠視化を少しでも減らせば近視の抑制を抑えられるのではないかと考えられております。そもそも、網膜周辺部の遠視化がなぜ起こるかと言えば、眼球がきれいな球体ではなく、ラグビーボールのような形をしていることが原因とされており、そのような形の問題を眼鏡やコンタクトレンズで矯正しようとするのが軸外収差抑制眼鏡とコンタクトレンズです。中国で行われた通常のめがねと軸外収差抑制眼鏡を比較した臨床試験では、両親のうち1名以上が近視で、年齢が6-12歳の子供たちで有意に近視の進行が抑制されたと報告されております。現在、日本でも臨床試験が始まっており、その結果が期待されております。

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