2008年02月23日No.18 ドライアイとコンタクトレンズのお話(2)
ソフトコンタクトレンズは一般に乾きやすいです。前回の小話で書いたように、涙の交換ができないことと素材に水を含むことによります。しかし、ソフトコンタクトレンズにはハードコンタクトレンズにはない大きな利点があります。それは「使い捨て」ができることです。
ドライアイがあると、どうしてもレンズが汚れやすくなります。交換サイクルの最も早いワンデーレンズ(一日使い捨てレンズ)だと、毎日新品のレンズを装用することになりますので、汚れは問題になりません。
また、素材をシリコーンハイドロゲルにすることで、酸素透過性を上げて含水率を下げる(乾きにくくなる)という、従来の素材では不可能であったことが可能になります。今回の小話は、最新の「乾燥予防ワンデーレンズ」と「シリコーンハイドロゲルレンズ」を紹介します。
乾燥予防ワンデーレンズ

「乾く」という感覚は実に奥が深く、実際の乾燥感だけではなく、違和感や不快感も含まれております。2週間使い捨てレンズで乾く人が、理論上は乾きやすいワンデーレンズ(含水率が上がるため)に変えた方が乾きにくくなったという声も聞きます。これは、乾く感じが汚れによる不快感からきているためだと思います。もちろんそれだけではなく、各メーカーで色々な工夫が行われている結果でもあります。現在一般的と思われる4つのレンズの特徴について説明します。
ワンデーアキュビューモイスト
ワンデーアキュビューとサイズや形は同じですが「ラクリオンテクノロジー」という技術で水との相性がよい高分子(ポリビニルピロリドン:PVP)を保存液中に配合してレンズの保湿力を長時間持続できるような工夫をしております。私もアキュビューからモイストへ変更しましたが、夜など装用時間が長くなってきた時にその差を実感しております。
デイリーズアクア
「ライトストリームテクノロジー」と呼ばれる技術で、生体適合性がたいへん高く人工血管などに使われているポリビニルアルコール(PVA)を素材に採用しております。表面がなめらかで、レンズを装用すると潤滑剤としてのPVAを放出し角膜を保護する働きがあります。
メニコンワンデー(ワンデーバイオメディクスも同じレンズです)
薄型レンズで、保存液に潤い成分を配合しております。乾燥感の比較による報告では、ワンデーアキュビューモイストよりも良い結果がでております(文献1参照)。もちろん相性がありますので、すべての人にはあてはまりませんが、患者さんの感想は概ね良いです。
メダリストワンデープラス
涙を引き寄せるといわれている「うるおい成分」を保存液に配合しております。非イオン性で汚れがつきにくく、さらに非球面のデザインを採用しておりにじみやぼけのでにくいレンズです。
- 文献1
- 丸山邦夫、横井則彦、木下 茂ほか:乾燥感の軽減を目的とした1日使い捨てソフトコンタクトレンズの比較検討. 日コレ誌36:21-23. 1994
シリコーンハイドロゲルレンズ

前回の小話でも書きましたが、レンズの含む水の割合(含水率)と酸素透過性の関係は従来のレンズでは密接な関係がありました。これは、レンズの素材中の自由水が酸素を運ぶ担い手でしたので、水の量が多ければたくさん酸素を運ぶことができ、レンズとしては安全なレンズになります。
しかし、水の量が多ければそれだけ蒸発する水の量も多くなり、その分レンズが涙を吸い上げてしまい、乾きをおこす原因となっていました。また、水を使って酸素を運ぶということは、水の酸素透過係数の80が限界で、それ以上酸素を透過させることは理論上不可能です。
シリコーンはそもそも酸素をたいへんよく通しますが、水とはなじまず、またたいへん硬いのでコンタクトレンズには不向きでした。しかし、技術が進みレンズとして実用化されました。
日本では最近から使用可能になりましたが、実はアメリカでは1999年から使用されており、すでに10年の歴史があります。特徴として、レンズの水分を減らすと逆に酸素透過係数が上がりますので、乾きにくく酸素も通すレンズができました。現在、日本で一般的なシリコーンレンズについて説明します。
O2オプティクス(オキシアも同じレンズです)


含水率は最も低く乾きにはたいへん強いレンズです。上の表の通り含水率が低いので酸素透過性も高いです。アメリカでの歴史も長く、現在でも非常に高い性能があります。メタンプラズマコーティングという処理がされており、これはレンズの表面に水となじむ性質のあるたいへん薄い膜を作っております。撥水性(水をはじく)のものを親水性(水となじむ)に変えるたいへん画期的な技術で、コンタクトレンズはもとより他の分野への応用も可能だそうです。レンズの欠点として、若干硬めレンズですので、まれにですが角膜上部に傷(SEALs)が出ることがあります。しかし発生頻度としては、よくSEALsの出るレンズよりも少ない印象ですので、大きな問題ではないと思います。
アキュビューアドバンス・オアシス


小話9でも紹介しましたシリコーンレンズです。O2オプティクスを第一世代とすると、アドバンスは第二世代、オアシスは第三世代のレンズです。アドバンスの特徴として、含水率を高めにしておりますので、やわらかいレンズとしての利点があります。ワンデーアキュビューモイストで説明したPVPを製造過程でシリコーンに混ぜておりますので、乾きにも十分な性能があります。オアシスは含水率を下げて、乾きに対する性能、酸素透過性を上げております。しかしながら、それによって失われるはずのやわらかさはシリコーンの化学構造を変えることで低下しておらず、たいへん優れたレンズです。私の感想としてワンデーアキュビューモイストとほぼ装用感の点では変わりないと思います。
まとめ
ドライアイの状態により、涙が少ない人は、レンズに水分を保持させるために親水性の強いタイプがよいですので、シリコーンハイドロゲルレンズ、ワンデーアキュビューモイストがおすすめです。涙の安定が悪くて、かわきを感じる人は、デイリーズアクアやメダリストプラス、乾きの自覚症状が強い方にはメニコンワンデーがおすすめだと思います。
実際、どのレンズが一番よいのかというのに、答えはありません。人それぞれですというのが私の答えです。相性もかなり大切ですので、実際に装用してみるのが一番です。ご希望があれば複数のレンズのお試しも可能です。例えば右はワンデーアキュビューモイスト、左はデイリーズアクア、次の日は反対にして・・・など。来院の際に遠慮なく言ってくださいね。
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