2008年04月20日No.20 カラーレンズの規制とコンタクトレンズの眼障害について
新生活が始まり、コンタクトレンズも一緒に始める方が多く来院されております。最初がとても肝心だと考えておりますので、説明や実際の装用練習に時間をかけております。
昨年の年末位から、カラーレンズについての相談と治療希望の患者さんを散見します。昨年の10月30日に北海道新聞で記事になりましたが、当院で扱うような医療用のコンタクトレンズ(カラーレンズも含みます)ではなく、おしゃれ用としてインターネットや雑貨店で買えるレンズでの眼障害が多発しているという内容でした。
当院ではこの半年の間にそのようなおしゃれ用のレンズを携帯電話の通販や雑貨店で購入して装用し、それが原因で角膜潰瘍などの眼病になったと思われる患者さんが5名ほどいらっしゃいました(幸い皆さん視力低下などの後遺症もなく治癒に至りました)。
眼科医の間でも問題視はされておりましたが、実際の被害がわかっておらず、また、すべてのレンズが問題かどうかの判定もできず、放置されていた現状があります。この4月5日の産経新聞の記事で
「カラーコンタクトレンズ(カラコン)による眼病が後を絶たないことを受け、経済産業省は5日、警告表示の義務化や安全性の確保などで法的規制を設ける方針を固めた。所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」の調査委員会が近く公表する報告書では、第三者的機関による審査など安全性担保の必要性が指摘される見込みで、同省は具体的検討に入る。」(記事全文)
とあり、安全性の確保に一歩前進できる可能性があります。
安全なレンズは?
実際、どのレンズが安全で、どのレンズが危険かといわれると、当院で扱っているレンズはすべて医療器具として厚生労働省の承認をうけております(右の例)。扱いとしては高度医療管理機器ですのでペースメーカーと同じレベルです。決められた通常の装用では、健康被害は起こらない(または極めて起こる確率は低い)と国がお墨付きを出したレンズとして、このようなレンズは安心して装用できるのではないかと考えております。
- 医療器具としての承認の例
- フレッシュルックデイリーズ (承認番号)21000BZY00068000
チバビジョン・イリュージョン(承認番号)20500BZY00371000
ワンデーアキュビューディファイン(承認番号)21700BZY00541000など
*当院で扱う、すべてのレンズは承認されておりますのでご安心ください。
重症の角膜感染症。視力は極度に低下しております。
ただし、どのようなレンズも100%安全ではなく、きちんとした使用方法を守らなければ同様の被害が出る可能性はあります。
NHKの4月16日の放送でも「コンタクトレンズが原因とみられる目の重い感染症で入院した人は1年間で160人余りに上り、その40%以上が使い捨てコンタクトレンズの使用期間を守っていなかったことが、学会の調査でわかりました。学会は「使用期間をきちんと守るとともに正しく洗浄してほしい」と注意を呼びかけています。」とあり、装用期間を守らないことはたいへん危険なことです。
当院でコンタクトレンズを定期的に処方している患者さんは、装用期間を守らない方はほとんどいませんが、時々診察してレンズの汚れや眼の状態から「違っていたらごめんなさい、レンズを長く使っていませんか?」と聞くとたいてい「わかりますか。すいません。気をつけます」
・・・もちろん私に謝る必要はまったくありません。怒る先生もいますが、大事なことはそういう習慣をやめてもらうことです。私はもちろん怒らずにとにかく危険性を理解してもらえるように説明させてもらいます。
例えば、現実的な問題として、お金がないので長く使ってしまいましたという方がいます。私は「もし病気になり治療になるとさらに高くつきますので、そういう場合はめがねにするか、さらに経済的に負担の小さいレンズを探しましょう」とご案内します。
「知り合いが大丈夫だったから、つい」という方には「黒目(角膜)は透明だから物が見えます。当たり前ですが透明でなくなったら物が見えなくなります。傷やばい菌などがついても軽いものだと黒目の透明性は戻りますが、重症だと移植して他のヒトの角膜と入れ替えないと元に戻らない濁りになります。
透明なものを濁らせるのは簡単ですが、濁ったものを透明にするのは今の医療では限界があります。ガラスを割るのは簡単でも元に戻せないのと同じです。そうなってから後悔しても遅いです。今、大丈夫でもこれからも大丈夫だという保障はありませんので、やめましょう。お知り合いの方にも伝えてくださいね」とご指導させてもらっております。
前田 直之教授
大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学寄附講座
最近の4月14日から16日までの3日にわたって、NHKのきょうの健康で「トラブルを防ぐ!コンタクトレンズ最新情報」が放送されました。講師の前田教授は、私の恩師で、私が眼科医で最も尊敬する先生です。
前田教授は、円錐角膜という病気の日本での第一人者で、角膜という黒目の部分に関する治療や研究、例えば角膜移植や近視矯正手術、コンタクトレンズに対する造詣の深さは日本はもとより、世界でもトップレベルだと思います。医療機器や統計や数学に対しても明るく、お話をするだけで先生の魅力にとりつかれ興奮してしまったのを昨日のことのように思い出します。
少し、横道にそれましたが、コンタクトレンズで最も大切なことを短くまとめると、正しい使い方と正しいお手入れ、さらに定期的な診察(3ヶ月に一度が目安)と、調子が悪い時はコンタクトをはずしてすぐに受診することだと思います。
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