院長の小話

2008年06月22日No.22 目によい食べ物、サプリメント その1(ビタミン編)

「体の調子がよくない、食欲がない、だるい」…こんなとき、私たちは食事に目を向けます。しかし、目が疲れた時に「目によい食べ物」を考えることはあまりないようです。

昔は暗いところで見にくくなる鳥目の民間薬としてハツ目うなぎが食されてきました。今回の小話は、目によいといわれている栄養素としてのビタミンと、サプリメントやブルーベリーなどに含まれるカロテノイド(carotenoid:天然色素)について2回にわたって書こうと思います。

ビタミンについて

ビタミンは「五大栄養素」の一つで生命の維持になくてはならないものです(他の栄養素:たんぱく質・脂肪・炭水化物・ミネラル)。エネルギーを得るためには栄養素を分解します(代謝)。その代謝を助ける役割をするのが「酵素」です。ビタミンは、この酵素の働きをしますが、体内で作り出すことができませんので、食事から摂り続ける必要があります。

体に取り込むことを考えた時に、大切なことがあります。ビタミンには2種類あり、水に溶けるか脂(あぶら)に溶けるかで水溶性と脂溶性にわかれ、ちがった特徴を持っています。

水溶性ビタミン(ビタミンB群、C)は、大量にとった場合に、余った分は尿に溶けて体から出ていきます。貯めておくことができませんので、必要量を毎日とることが大切です。とりすぎても出ていくだけなので問題ないですが無駄になります。加熱により破壊されやすいので注意が必要です。

脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)は、とりだめがききます。しかし、大量にとると過剰症になる場合もあります。これらのビタミンは油に溶けて吸収されやすくなるので、野菜などは炒めたり、揚げたりするとよいといわれております。

それぞれのビタミンの特徴と多く含まれる食物について説明します。

ビタミンA

ビタミンAといえばうなぎですね

レバー(肝臓です)

にんじん:βカロチンは体内でビタミンAに変化します。


肝油


野菜炒め

視覚に最も関係するビタミンです。別名レチノール(retinol)と呼ばれ網膜を表すレチナ(retina)にその名前が非常に似ております。人間の目は網膜の視細胞で光を感じますが、明暗視はロドプシンという色素が光を吸収して変化することから始まります。このロドプシンはビタミンAとオプシンという蛋白質から作られます。

ビタミンAが不足すると暗いところでものが見にくくなります。また暗いところへいくと最初はよく見えないですが、すこしずつ見えてきます(暗順応)が、この機能が低下することもあります。

ビタミンAが多く含まれる食品はうなぎ、レバー、肝油(サメやクジラ、タラの肝臓から抽出した脂分)、チーズ、バター、牛乳、卵、緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ、ほうれんそうなどの青菜類)です。

脂溶性ですので、油に溶けます。野菜のバター炒めがよい調理法といわれております。

現在の日本では、通常の食生活から十分なビタミンAが補給できますので、製剤や魚の肝臓による過剰摂取に注意が必要です。ただし、野菜に含まれるβカロチン(ビタミンAの前駆体)では過剰摂取は問題になりません。


ビタミンB

ここでも登場、レバーです

たまご


ビタミンBはビタミンB群と言われる位で8種類あります。一般的に目によいといわれているのはB1、B2とB12です。

ビタミンB1(チアミン)は欠乏すると脚気(かっけ:多発神経炎、むくみ、心不全)を引き起こすように、神経に支障を来たします。目も視神経という神経が重要な働きをしておりますので、疲労をとる効果などが期待できます。

ビタミンB2(リボフラミン)は不足すると肌荒れや、口の中にとても痛い潰瘍ができる口内炎を引き起こすことで有名です。細胞の再生や成長を促進する働きがありますので、皮膚や髪、爪や粘膜を作るのに使われます。角膜や眼瞼(まぶた)の皮膚や粘膜を正常に保つためにも必要で、フラビタン点眼やFAD点眼として角膜炎や眼瞼炎の治療にも使います。

ビタミンB12(シアノコバラミン)は目の神経に働き、ピントを合わせる調節機能を改善するといわれております。眼精疲労の治療としてサンコバ点眼が治療で使われます。

ビタミンB1は穀類、豚肉などの他、牛のレバー、豆類、豆腐、玄米、ごまなどに多く含まれています。
ビタミンB2はレバー、納豆、ほうれん草、魚介類、卵などに多く含まれています。
ビタミンB12はあさりやかきなどの貝類やのり、肉類(とくにレバー)、魚類、卵や牛乳にも多く含まれています。

ビタミンC

トマトは意外とビタミンCが豊富です

アセロラ

いちご


ビタミンC(アスコルビン酸)が欠乏すると体の各部から出血する”壊血病”になります。大航海時代には船員が原因不明で死に至るので海賊以上に恐れられていたそうです。野菜や果物を食べていた上級の船員に発病が少なかったことから、キャプテン・クックの南太平洋探検の第一回航海ではザワークラウト(キャベツの漬物のような保存食)や果物摂取で死者を出さなかったという逸話は有名です。しかしながら、ビタミンCが原因だと突き止めるまでにはかなりの時間がかかったそうです。

ビタミンCは不足すると皮膚や粘膜、血管等、細胞間の結合が緩み、歯ぐきから出血しやすくなる、切り傷の治りが悪くなる、皮膚のハリがなくなります。これはコラーゲンを作る働きがあるからです。目においても水晶体という目の中のレンズの透明性を維持するのに重要ですので、白内障の予防によいのかもしれません。

よくレモン○個分と表現されますが、レモン1個のビタミンCは20mgと決められております。ちなみに成人の1日あたりの摂取量としての厚生労働省の推奨量は100mgですのでレモン5個分です。ビタミンCはレモンやグレープフルーツなどの柑橘類に多い印象がありますが、トマトやいちご、アセロラにも意外と多く含まれております。

食物から摂取する分には過剰摂取の心配はないですし、多少多くても尿中に排泄されますが、サプリメントなどから大量のビタミンCを長期間にわたって摂取すると下痢を起こしたり、ビタミンCは酸性ですので胃を痛める可能性があります。

次の小話では、ブルーベリーに含まれるアントシアニンなどのカロテノイド(天然色素)と目の関係について説明します。

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