院長の小話

2008年08月21日No.24 ワックと子供の仮性近視について

小学校のお子さんの受診が増えております。学校の検査で視力の低下がわかり受診をすすめられた場合と、ご本人が見にくさを感じている場合、また親御さんが目を細めるのに気がついて来院される場合の3つが主な理由です。

皆さん、視力の回復を希望されて来られます。

インターネットで視力回復を調べると、視力回復トレーニングや、矯正手術(レーシック)、視力回復のツボや、視力回復本、視力回復セット?の販売など次から次へと出てきます。

矯正手術(レーシック)は角膜を削る手術ですので、近視などの矯正にかなりの効果があります(副作用や合併症についてはまた別の機会に説明させてもらいます。また一般的に小中学校のお子さんにはできません)。

しかしながら、他の方法に関しては、果たして医学的にどうなのだろうと思います。もし、回復するのなら私も近視なので試してみたいものです。

問題なのはすべてのお子さんが回復するような誤解を与えている点です。
視力低下の原因は様々です。中には回復するものもあれば、残念ながらまったくしないものもあります。
大切なのは、目の状態を的確に判断して最良の治療や状態を作り上げていくことだと思います。
具体的に、小学校低学年のお子さんの目の状態としては大きく3つに分けることができます。
1. 近視
2. 仮性近視
3. その他

近視

近視は軸性近視とも呼ばれ、網膜の前で像が結ばれてしまうために近くは見えますが、遠くが見にくい状態になります。

残念ながら、この場合は、めがねをかけて像が結ばれる位置を網膜に合わせてあげるしか有効な治療法はありません。(コンタクトレンズ、矯正手術も像の位置を変えるという点で同じです)


仮性近視

仮性近視は偽近視、学校近視ともいわれており、初期の近視の中にこの状態のお子さんが含まれております。

人間の眼の中には毛様体(もうようたい)というピントを合わせるための筋肉があります。近くを見るときはちぢんで(緊張して)、遠くを見るときはゆるみます。

近くの作業を多くすると、この筋肉が過度に緊張して、遠くを見ようとしてもゆるまなくなります。この状態が調節緊張、仮性近視という状態です。

近視との大きな違いは、視力に変化が起こることです。視力が良くなったり悪くなったりします。または、治療で良くなります。

例えば、本を読んだ直後は遠くが見にくいけど、外で遊んだあとはよく見える、などです。このような場合は仮性近視の可能性が高いです。


仮性近視の検査

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オートレフラクトメーター

いずれにしても裸眼視力だけでは判断ができません。当院では、オートレフラクトメーターという機械で近視、遠視、乱視の状態を調べ、必要に応じてピントの合わないめがねをかけたり、目薬で筋肉の緊張を取り除いて検査をします。


当院の仮性近視の治療

ワック

仮性近視と診断がついた場合、当院では2種類の目薬とワックという機械を使って治療を行います。もちろんすべて保険診療で、1〜2週間に一度の治療になります。

治療といっても機械をのぞいてもらい、立体風景を眺めるだけですので、小学校低学年の方でも無理なく行うことができます。ワックの前後に視力検査を行い、私の診察は生活の中でのアドバイスがメインになります。

例えば、ゲームなどの時間や、日ごろの癖や姿勢について、状況を聞きながらご本人と親御さんと3人で相談しながら、お話をさせていただきます。

めがね装用しか治療がない近視に対しても、現在の視力や近視の強さを調べるだけではなく、学校の黒板の見え方や家での状況をお聞きして、またご本人の気持ちや親御さんのお考えなども考慮しながらベストなタイミングで装用が開始できるように考えております。

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