院長の小話

2008年11月28日No.27 白内障と緑内障:その2 白内障について

以前、小話5で白内障のことについて書きましたが、もう少し詳しく説明しようと思います。

私は診察中に白内障はどんな病気ですか?と聞かれると、

「白内障は髪の毛が白髪になるように、目の中にある虫めがねのようなレンズが白く濁る病気です。よほどじゃないと手遅れにはならないので、ある程度見えていて生活が困らないうちは目薬の治療でよいと思います。目薬は治す力はなく、進むのを遅らせる効果しかありません。個人差があり、目薬を使っていてもどんどん進む場合もあります。もし、見にくくて困るのなら手術をした方が良いと思います。手術は局所麻酔で30分くらいで終わります。とても安全な手術です。白内障だけが原因なら、手術をすれば見え方はよくなります。」

さて、それぞれを詳しく説明していこうと思います。

まず「目の中にある虫めがねのようなレンズ」。
これは水晶体を指しています。虫めがねという言葉は凸レンズ(真ん中が厚く端が薄いレンズ)をイメージしてもらうために使っておりますが、実際の水晶体は、目の瞳孔のさらに奥にありますのでのぞいて見ても良く見えません。

眼科では、顕微鏡で細い光を当てながら瞳孔をのぞくと水晶体が見え、白内障かどうかがわかります。詳しく調べるためには散瞳といって、瞳孔を拡げる目薬をさして観察します。水晶体は直径約9mm、厚さ4mmのとても小さいものです。この部分が、年齢とともに白く濁ります。もちろん他の原因もありますが、最も多い理由は加齢といわれております。






目薬は進行を遅らせる効果が期待されております。しかし、一度できた濁りをもとの透明な状態に戻すことはできません。これができれば世の中から白内障の手術がいらなくなりますし、医療技術が遅れていて手術がなかなかできないアフリカやアジアの国々で、多くの人たちを失明から救うことができるようになります(これらの国では白内障が失明原因の第一位です)。

手術は、とても完成された安全な手術です。時々、簡単な手術と書かれていることがありますが、合併症や感染を限りなく0にして、多くの人たちに満足のいく結果を出すためにはとても高い技術が要求されます。手術をされる眼科医の日々の研鑽の上に、現在の高い成功率が維持されていると思います。

最近は、機器の進歩もめざましく外科手術の中で、最も安全な手術の一つと考えてもよいでしょう。ですので、怖がらずに安心して手術を受けていただきたいと思います。もちろん手術ですので絶対はありません。手術を受ける際には納得の行くまで説明を聞くのが良いと思います。

手術は、局所麻酔で行いますので、手術中にも会話が可能です。約3mm程度の小さな傷から手術を行いますので、目にかかる負担はとても小さいです(低侵襲手術)。濁った水晶体を超音波で砕き、バラバラにして吸ってしまいます。すべて吸うのではなく、まわりの皮(嚢)を一枚、カプセルのように残します。

そのなかに、水晶体の代わりになる人工レンズを入れて手術は終了です。人工レンズの度数は自由に決めることができますので、強い近視の方を軽い近視にすることもできますし、左右の度の差を縮めることもできます。

白内障以外に病気がなく、手術が問題なく行われると、視力は回復します。回復のスピードは個人差があります。翌日から見えるようになる人もいれば、長い期間をかけて徐々に見えるようになる人もいます。

簡単に説明しましたが、もしわからないことがありましたら、診察の時に質問してください。

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