2009年07月21日No.35 黒目の傷について その2
前回の小話に続き、今回も黒目の傷について説明していきます。
黒目の傷はパターンがあると前回説明しましたが、もう少し詳しくいくつかのパターンに分けて紹介していこうと思います。
1. 目に物が入った場合 その1
コンクリートの破片による傷:お仕事中にコンクリートの破片が入り傷がつきました
何かが目に入ってゴロゴロする。自転車に乗っていたら砂が目に入ったようだ。現場で仕事をしていたらコンクリートの破片が目に入った・・・。
人間の目にはまぶたがありますが、まぶたを閉じるよりも早く物が飛んできた場合、眼球に当たります。小さいものだと表面に付着したり刺さることで、まばたきの際に痛みやゴロゴロ感(異物感)の原因になります。この場合は、傷のパターンも重要ですが、目に物が入ってから症状が出始めたという事実が大切です。当たり前ですが、入る前には症状は出ません。調子の悪くなったその状況を詳しく聞くことで原因が推測できます。
物が入った場合、傷の治療はもちろん大切ですが、目に入ったものをきちんと取り出すことが大切です。時間が経っている場合は、すでに出ていってしまい、すでにない場合も多いですが、異物感がある場合は、念入りに探して除去します。その後、感染に注意しながら傷の治療を行います。
2. 目に物が入った場合 その2
まぶたの裏のゴミ:写真では大きく見えますが、実際にはとても小さく肉眼では見えないこともあります。
まぶたの裏のゴミによる傷:大量の傷がついています。洗っても取れなかったようです。
目に物が入った場合でも、すべてを取ることができたり、洗ったりして物がなくなれば、傷がほとんどつかないか、軽く終わる場合もありますが、目に入ったものが小さいものでも、まぶたの裏側についてしまい、なかなかとれない場合は、傷がどんどん悪化してしまうことがあります。
まばたき毎に新しい傷がつきますので、日に日に悪くなっていきます。まぶたの裏側にゴミが入ると洗ってもなかなか取れません。できれば、上のまぶたをひっくり返して洗うと良いのですが、ひっくり返すのが難しかったり、十分に洗い流せないこともあります。上のまぶたがゴロゴロして、まばたきの度に症状が出る場合は注意が必要です。
3. 目に物が当たったなどの外傷による傷
線状の傷:紙が目に当たって傷ができました。
枝が刺さってできた傷:広い範囲の傷になっております。涙がかなり出て、とても強い痛みが出ておりました。
山で枝が目に刺さった、子供の手が当たった・・・
目に物(目に入らない大きな物)が当たって傷がつくこともあります。黒目の最も表面は上皮といって一種のうすい皮のような構造です。枝が当たって表面をこするような力がかかった場合は、上皮が一部はがれる状態(上皮剥離)が起こります(枝が刺さってできた傷の写真)。
傷のパターンは様々で、紙などの鋭利なもので切れた場合は線状の傷になりますし、目よりも大きなものが目全体に当たった場合は、黒目全体に傷がつくこともあります。衝撃が強いと、白目(結膜)に傷がついたり出血したりすることもありますし、黒目(角膜)の内側(前房)で出血が起こり、視力が一時的に低下することもあります。また、目の内部まで衝撃が加わっていることもあり、眼底の状態も確認する必要があることもあります。
4. 乾きによる傷
乾きによる傷:涙の蒸発がとても早い方でした。ドライアイが疑われます。
乾きによる傷は、手アレや皮膚の荒れなどを想像していただくとわかりやすいと思います。目は涙によって常に潤っておりますが、涙の量が少ない場合や、涙の蒸発が早い場合は、黒目や白目の表面がむき出しになり、乾いて傷になります。
また、目はまばたきをすることで潤いを均一にしておりますが、何らかの理由でまぶたが閉じきらない場合も乾いて傷がつきます。顔面神経麻痺になるとまぶたの動きが悪くなり、閉じきらなくなります。その場合、黒目の下の方に帯状の傷ができます。充血してウサギのように目が赤くなりますので兎眼(とがん)と呼ばれております。
5. 薬のアレルギーによる傷
薬剤性の傷:わかりにくいですが無数の傷がでてザラザラな状態です。アレルギーの原因となっている目薬をやめると傷がなくなります。
薬のアレルギーは黒目の全体に出る特徴があります。これは皮膚の「ただれ」や「かぶれ」を想像していただくとわかりやすいと思います。皮膚の場合、一般的には触れた場所が赤くなることが多いと思います。
目も同じで、体質に合わない目薬が触れた場所がいわば「ただれた状態」になり、傷となります。目薬は白目と黒目の全体に広がりますので、さした方の目の黒目全体に傷が出ます。もちろん両眼にさしていれば両方の目に同じような傷が出ることになります。一般的には、その薬を止めると傷は軽快していきます。
次回は、コンタクトレンズを装用している方に特徴的な黒目の傷を紹介していこうと思います。
- Category :
- 院長の小話
- 2023年04月
- 2021年08月
- 2018年12月
- 2015年07月
- 2015年06月
- 2015年05月
- 2015年04月
- 2015年03月
- 2015年02月
- 2015年01月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年09月
- 2014年08月
- 2014年07月
- 2014年06月
- 2014年05月
- 2014年04月
- 2014年02月
- 2014年01月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年09月
- 2013年08月
- 2013年07月
- 2013年06月
- 2013年05月
- 2013年04月
- 2013年03月
- 2013年02月
- 2013年01月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年09月
- 2012年08月
- 2012年07月
- 2012年06月
- 2012年05月
- 2012年04月
- 2012年03月
- 2012年02月
- 2012年01月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年09月
- 2011年08月
- 2011年07月
- 2011年06月
- 2011年05月
- 2011年04月
- 2011年03月
- 2011年02月
- 2011年01月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年09月
- 2010年08月
- 2010年07月
- 2010年06月
- 2010年05月
- 2010年04月
- 2010年03月
- 2010年02月
- 2010年01月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年09月
- 2009年08月
- 2009年07月
- 2009年06月
- 2009年05月
- 2009年04月
- 2009年03月
- 2009年02月
- 2009年01月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年09月
- 2008年08月
- 2008年07月
- 2008年06月
- 2008年05月
- 2008年04月
- 2008年03月
- 2008年02月
- 2008年01月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年09月
- 2007年08月
- 2007年07月
- 2007年06月
- 2007年04月
- 2007年03月
- 2007年02月
- 2006年12月
- 2006年11月