2009年08月21日No.36 黒目の傷について その3
前回の小話で、傷のパターンと原因について説明しましたが、当院ではコンタクトレンズの患者さんが多いので、コンタクトレンズについての傷についても詳しく説明しようと思います。
1. ソフトコンタクトレンズによる傷 その1
スマイルマークパターン:乾きが疑われます。装用時間を短くするのも大切です。
ソフトレンズは水分を含んでおりますので、乾きやすい傾向があります。水分を含むということは常に水分が蒸発しますので、その不足分は涙を吸い上げて補うために涙が不足して乾くといわれております。これはすべてのソフトレンズに当てはまりますので乾きによる傷は時々見かけることがあります。
特徴として、黒目の下の方に出ます。スマイルマークパターンと呼ばれており、スマイルマークの口のような形の傷がでることに由来します。点眼で涙を補うか、コンタクトレンズをシリコン素材のレンズや、水分の少ないタイプに変更するなどの対処を行います。
2.ソフトコンタクトレンズによる傷 その2
黒目の上の傷2:特有のレンズでみられますので、それ以外のコンタクトレンズに変えてからは傷が再発しなくなりました。
黒目の上の傷1:本人の気がつかないうちに傷ができていました。
レンズの内面に汚れが付着している場合や、一部のソフトレンズを使用中に、黒目の上部に傷が出ることがあります。黒目の上部から1〜2mmの離れたところにできる特徴があります。医学的にはepithelial splitting(エピセリアルスプリッティング)と呼ばれております。すべての人にでるわけではないので相性が問題になっていると思います。痛みや充血が出ることがありますので、自覚して来院される場合もありますが、症状がほとんどない場合も多いです。傷の出にくいレンズに変更すると傷は消失しますが、治療のためにコンタクトレンズの中止が必要な場合もあります。
3.ハードコンタクトレンズによる傷 その1
充血の位置:小話17で紹介した充血の位置です。なかなか消えないのでソフトレンズに交換する方も多いです。
3時-9時ステイニング:時計をイメージしてください。ハードレンズ特有の傷です。
ハードレンズによる傷はソフトレンズよりも一般的にはつきにくいといわれております。それは、レンズと目の間にゴミなどが入った場合は、とにかく痛いのでレンズを外すことが多く、それにより軽症で済むからです。
ゴミ以外の傷で有名な傷に3時-9時ステイニングがあります。時計の3時と9時の部分に傷がでるもので、白目の充血で黒目の両横に充血が出ている場合は、この傷が出ている可能性が高いです。ハードレンズ装用者の1割位の方に出るといわれており、涙が黒目を覆えないことが原因ですので、ドライアイがある場合に最も出やすいです。治療として点眼で涙を補うか、レンズの交換をするか、さらにはソフトレンズに変えてしまう方法が考えられます。
4.ハードコンタクトレンズによる傷 その2
ハードレンズの下方固着:レンズをしているように見えますが、これは痕です。本州の眼科医院で作成したレンズによるものとのことですが不適切な調整が原因だと思います。特に傷跡は残らず治癒しております。
ハードレンズの固着:レンズの痕が残っております。10年近く同じレンズを使用し、かなり汚れていたのも原因の一つです。レンズを新品に変えて、傷の治療で痕は消えました。
ハードレンズは、黒目のカーブとレンズのカーブを合わせる必要があります。ソフトレンズと違い、レンズが上下に動く必要がありますが、動きすぎると見にくいですし、逆に動かないと固着といってレンズが止まってしまい、その部分にレンズの跡がつきます。レンズの大きさや形を調整して、適度な動きを確保することで傷の再発を予防します。あまり見かけませんが、コンタクトレンズの調整がうまくいかなかった場合に起こります。
5.その他
アレルギー性結膜炎でまぶたの裏側の状態が悪くなっても黒目に傷がでますし、ヘルペスなどの感染症でも黒目に傷がでます。まつ毛の状況やお化粧によっても傷が起こることもあります。
治療して痕を残さずに治すことが大切なのは、言うまでもないですが、原因が何かを突き止めて、お伝えすることがとても大切だと思っております。さらに、患者さんの病気への理解が深まれば、おのずと再発予防もできますし、不安感の軽減や、痛みに対する感じ方も変わると思います。何か、ご質問があればいつでも相談してくださいね。
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