院長の小話

2010年02月20日No.42 ハードレンズからソフトレンズへ(問題点)

前回の小話で、ハードレンズからソフトレンズにする利点をいくつか紹介しましたが、残念ながら問題点や注意点もあります。

「角膜乱視の影響を受ける」

角膜乱視

ハードレンズはレンズ自体が硬いので、黒目(角膜)のゆがみである角膜乱視を矯正することができます。前回の小話38で書いたように、黒目の形がラグビーボールのようにゆがんでいても、ハードレンズをすることでレンズの内側のきれいな球面の形に矯正されるますので、黒目のゆがみが一時的に少なくなり、乱視がない状態に近づきます。レンズを外しても数日はゆがみの少ない状態が続きますので、例えば、以前に乱視があると言われた人でも、ハードレンズをしていた直後に眼科やめがね店で検査をすると乱視がないといわれることがあります。ないわけではなく、ハードレンズで一時的にわからなくなっているだけです。数日間、ハードレンズを中止すると、角膜が本来の姿に戻りますので、その時点で乱視があるのかを判断すべきです。

「点眼液に注意が必要」

どのようなレンズを装用していても点眼できます

ハードレンズは原則、レンズをしたままの点眼は可能だと思います。しかし、成分が懸濁(濁っている薬ですね)している水性の点眼液と油性の点眼液はくもりや汚れの原因になります。フルメトロンなどのステロイドの点眼液です。通常は炎症が起こっている場合は、レンズの装用を中止しますので問題にならないと思います。ドライアイの点眼液などはレンズ上からさして問題ないと思いますが、防腐剤や界面活性剤が含まれておりますので、しみるなどの症状がある場合は点眼を控えるべきです。

ソフトレンズをしたまま点眼することは、ハードレンズよりも注意が必要です。その理由として、薬剤がソフトレンズを変質させたり、防腐剤がレンズに吸着し上皮(黒目の表面)障害を起こすといわれているからです。一般的に、1日使い捨てレンズは上記の問題はほとんど起こりませんので(1日で捨てるので)、ハードレンズと同様にほとんどの点眼が可能だと考えます。逆に、1ヶ月以上使用するレンズ(1ヶ月使い捨てレンズや長く使うタイプのソフトレンズ)は、点眼が長期にわたることで防腐剤(塩化ベンザルコニウムなど)の吸着と蓄積が増え、障害が出ることもありますので、しない方が良いと思います。2週間使い捨てレンズの上からの点眼については、眼科医の間でも意見が分かれるところです。当院では、目の状態から点眼するメリットが多い場合は、症状の発生に注意しながら使っていただくこともあります。


「装用時間に注意」

これは、レンズの酸素透過性にかかわる問題です。一般的にソフトレンズはハードレンズよりも酸素透過性が低く、レンズを覆う面積も大きいので、角膜(黒目)が酸素不足になりやすいです。さらに、汚れたレンズの装用や、長時間にわたる装用は目に負担がかかります。より注意が必要と考えます。しかし、最近のシリコーンハイドロジェルのレンズなどは酸素透過性がとても高く、ハードレンズとの差はほとんどありません。裸眼の状態の98%の酸素を通すというレンズもあるくらいです。
しかしながら、ハードレンズで行われている涙の交換がなくなりますし、、長時間の装用で目が乾くとレンズが張り付きます。装用時間は短い方が目にとって負担が小さいことには変わりありませんので、早めに外すのを心がけると良いと思います。

「乾きに注意」

ハードレンズは角膜(黒目)よりも小さく、まばたきの度に動きます。動くことによって、角膜とレンズの間の涙液が交換されます。これは目にとってより自然な状態です。対して、ソフトレンズは角膜よりも大きく、レンズはほとんど動きません。涙の交換はとても少ないです。また、ソフトレンズが柔らかいのは水分を含んでいるからです。水分を含んでいるレンズをすると目がうるおう感じがしますが、実際は逆でレンズの水分が蒸発した場合は、それを補うために涙を吸い上げてしまい、涙が奪われて乾きやすくなります。ソフトレンズも、乾きに対して改良を行っており、最近のレンズは乾きにくくなってきましたが、それでも乾くようであれば、コンタクトレンズの上から点眼をすると良いと思います。

ソフトレンズは水分を含んでおり、その水分はすぐに蒸発します。 不足した水分は涙で補いますので、目が乾きます。


「お手入れに注意」

アメーバーによる感染症。ソフトレンズ特有のものです。

ハードレンズは水道水ですすぐことができますが、ソフトレンズはできません。それは、感染に対する強さの違いです。一般にソフトレンズは汚れやすく、細菌(ばいきんですね)や真菌(カビの仲間です)、アメーバーなどが付着しやすいです。コンタクトレンズを原因とする感染症の大多数はソフトレンズの使用者といわれておりますので、より注意が必要です。


以上、ハードレンズからソフトレンズに変更する際の利点や問題点を紹介しました。レンズの特性を考えた時に、硬いレンズと柔らかいレンズでは、硬いレンズの方が視力の質が高いのは想像しやすいです(ガラスの虫眼鏡とビニールのレンズの虫眼鏡を想像してください)。私は、ソフト派ですが、見にくくて困ったことはありません。逆にハードレンズのゴロゴロする感じが苦手ですね。その方の目の状態やライフスタイルに合わせて、レンズを選ぶのがもっとも大切です。その時の選ぶ基準に今回までの小話を参考にしていただければ幸いです。

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