子供の視力低下

検査結果

A:1.0以上 B:0.9〜0.7
C:0.6〜0.3 D:0.3未満

小中学生の視力低下が急増しております。

文部科学省の2006年の調査では視力1.0未満の小学生は全体の27.2%、30年前の1.5倍です。
学校検診でB(0.7-0.9)、C(0.3-0.6)、D(0.3未満)であれば、適切な診断治療が必要です。

「視力低下=メガネ」と考えがちですが、そう単純ではありません。
一般に視力低下の状態で多いのは

の3つだと思います。もちろん、黒目に傷がある場合や斜視(両目の向きの異常)の時など他の病気の場合もあります。

検査について

当院では、

  1. 裸眼(メガネなし)の視力を測定
  2. 機械による屈折力(近視や遠視、乱視の度数)を測定
  3. 自覚的な矯正視力(近視や遠視・乱視のメガネをかけて見やすくなるか)の測定
をします。
その後、仮性近視や調節緊張による近視や遠視なのかを検査するために「雲霧法」や「目薬による検査」を必要に応じておこないます。

雲霧法(ウンム法)
わざとピントが合わないようにしたメガネを15分位かけて、ピントを合わせる調節ができない状態から検査をしていく方法です。
目薬を使った検査
調節を麻痺させる目薬を点眼し、完全に調節力をなくした状態で近視や遠視・乱視の度数を調べる検査です。調節できないので検査後も見え方がぼんやりとしてしまいます。

近視

目に入ってきた光は角膜や水晶体などのレンズを通り、目の奥の網膜という膜に像がむすばれ、ものが見えます。網膜より前で像がむすばれてしまうのが近視です。近くはよく見えますが遠くが見にくい状態になります。近視には遺伝と環境が互いに作用しあっていてその本態はまだ十分に解明されていません。強い近視では眼球の長さが延びていて、遺伝にかかわる場合が多く見られます。しかし、軽い近視では環境の影響が大きく、近視になりやすい子供さんが本を顔に近づけて読みすぎたり、携帯用ゲームばかりしていると近視になりやすい傾向があります。

生まれた時は、特殊な病気の場合以外は遠視が多く(眼球も小さいので、網膜の後方で像を結ぶのも一因です)、体が大きくなるに従って、眼球も大きくなり遠視は軽くなっていきます。眼球が大きくなり長くなると、一般的には近視の方向に進みます。体の成長が止まる20歳ごろに、遠視と近視の境目で変化が止まれば、正視という状態になります。行き過ぎると近視になりますが、これは身長に個人差があるのと同じで個人による差です。しかしながら、日本人の約半数は近視といわれているように、世界中には近視が多く発生するグループが存在します。昔の典型的日本人のイメージがメガネをかけているのは象徴的です(カメラもぶら下げていますが)。ものすごく目を使う、つまり勉強や近くの作業を多くするグループと、そうでないグループを比べると、確かに近くの作業を多くするグループの方が近視の比率が高いといわれております。遺伝的な要因以外に、環境による影響が確かにあるのではないでしょうか。

治療方法

検査の結果近視が判明し、裸眼視力がおよそ0.7未満、あるいは生活に不自由がある場合は、凹レンズの入った眼鏡を処方し、必要に応じて使っていただくということになります。
「眼鏡を掛け始めたら、近視が進んだ」とおっしゃる親御さんもいますが、それは作った眼鏡が適切なものであれば、眼鏡をかけたこととは関係なく、近視が進む時期だったのだと思いますし、通常眼鏡をかけた時に見やすくなるので、裸眼の時の見にくさを強く感じてしまうこともあります。

「小さな子供に眼鏡をかけるのはかわいそう」とよく言われますが、「確かにお気持ちはわかりますが、お子さんが見にくくて困るのも同じくらいかわいそうですよ」と説明しております。眼鏡は遠くを見るための道具です。なければ必要な時でもかけることはできませんが、あっても近くを見るときや机で勉強する時など不要な時はしなければいいのです。付けはずしをすることで、近視が進むという報告はないと思います。
弱視の治療のために眼鏡をしている場合は、快適な生活のためではなく、視力を獲得するための治療ですから常用しなければいけません。また、裸眼視力が0.3以下など、明らかに見にくい場合は疲れますので常用をおすすめしております。

遠視と弱視

遠視は、遠くがよく見えて目がよい状態だと誤解されますが、通常、遠くも近くもぼんやり見えており、けしてよい状態ではありません。像が網膜の後方でむすんでしまい、鮮明には見えません。しかし、軽い場合は調節といって毛様体筋という筋肉で無理をしてピントを合わせようとしますので、学校の視力検査では問題ないのに、見にくい、疲れるといった症状が出ることもあります。また、「弱視」といって、正しく合わせた眼鏡をかけても1.0まで見えない状態になることがあります。遠視が強いと、近くも遠くも見にくい状態ですので、ぼんやりとした景色をみて成長することになります。眼の発育にとって「はっきりとした景色」を見ることで目の神経が発達しますので、放置すると神経が未熟なままになり、将来眼鏡をかけても視力が出ない状態になります。一般に視力の発達は小学校低学年から中学年(中学生ではありません)までといわれており、その後の発達は通常期待できませんので、弱視が判明した場合は至急治療が必要になります。治療は「適切なめがねをかけて、しっかり物を見ること」になります。小学校前のお子さんが眼鏡をかけている場合は、たいていこの弱視の治療中です。治療に反応する時期がありますので、「眼鏡は中学生になってから」では手遅れになる可能性があります

治療方法

眼科できちんと度のあった眼鏡を処方し、ものを見ることが治療になります。