院長の小話

2012年05月20日no.69 結膜炎について(その7)「アレルギー性結膜炎(2)」

 今回の小話では、アレルギー性結膜炎の症状と治療についてお伝えしようと思います。

3.症状

 アレルギー性結膜炎の症状といえば、まずは「かゆみ」です。かゆいので目をこすってしまったり、かいてしまうとさらにかゆくなる、とてもやっかいな症状です。他には充血やまぶたの腫れも起こります。ゴロゴロ感やあつい感じも症状の一種です。悪化してくると角膜(黒目)の周辺が赤紫色になり、結膜(白目)にゼリー状の目やにが出たり、水ぶくれのような状態(結膜浮腫)になります。

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 眼科ではまぶたの裏側(眼瞼結膜)も確認しますが、充血とともに「乳頭」と呼ばれるぶつぶつが発生していることが多いです。写真のように上のまぶたの裏側では白い点々に見えます。ひどくなってくると、このぶつぶつが巨大になり、「巨大乳頭結膜炎」という病気になり、強い異物感や、角膜に傷をつけることもあります。このような状態になると、症状が強いだけではなく、治療も長引くことが多く患者さんの負担が大きくなります。したがって、かゆみだけの軽いうちに、早めに眼科を受診して治療を開始することが大切です。

4.治療

 アレルギー性結膜炎の治療には、抗アレルギー薬の点眼薬が良く使われます。抗アレルギー薬には大きくわけて2種類の分類があります。ちょっと難しい話ですが、そもそもアレルギーの症状は、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの物質(化学伝達物質、ケミカルメディーエーター)が放出されて、それが末梢神経の受容体と呼ばれる結合する部分と結合して、かゆみや発赤などの症状が出ます。

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 一つ目の薬は、肥満細胞からヒスタミンなどの放出(遊離)を抑えるもので、化学伝達物質遊離抑制薬と呼ばれております。ヒスタミンを増やさない効果がありますが、効果が発現するまでに時間がかかります。花粉症など、ある程度発症の時期が予測できる場合に、症状が現れる前から使い始めることもあります。点眼薬ではインタール、アレギサール、リザベンなどが有名です。

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 二つ目の薬は、かゆみの原因物質であるヒスタミンが受容体に結合するのを邪魔するもので、化学伝達物質受容体拮抗薬(ヒスタミンH1拮抗薬)です。ヒスタミンの作用を直接阻止するので、強いかゆみなどにも効果を発揮し、効果が出るまでの時間も比較的短いとされております。リボスチンやザジテンなどが有名です。
 さらに抗アレルギー薬ではないですが、症状が強い場合はステロイド点眼薬を使うことがあります。ステロイドは炎症自体を軽減する効果があり、とても有用な薬ですが、感染症にかかりやすくなったり、眼圧が上がるステロイド緑内障などの副作用があり、注意深い検査診察のもとで使用する必要があります。
 薬以外の治療として、アレルギーの原因から遠ざかるのは、もちろん有用で、例えばコンタクトレンズの汚れが原因の場合などは、より汚れにくいレンズに替えたり、コンタクトレンズを中止することで症状の改善が期待できます。

 小話7回にわたり、結膜炎の概略と代表的な結膜炎について説明してきました。他にも色々な結膜炎があり、また紹介した結膜炎でも程度は様々で、点眼で1日で治るものもあれば、色々な治療を試みてやっと治るものもあります。診断も明らかにすぐにわかるものもあれば、非常にわかりにくいものや、同時に複数の原因が関与していたりすることもあり、色々な意味でバリエーションが広いのが結膜炎の特徴だと私は思います。

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