院長の小話

2013年04月20日no.80 アレルギー性結膜炎について(その1)

 雪が解けて暖かくなってくると、旭川も花粉が飛び始めて花粉症の季節に入っていきます。花粉症で最も有名なスギ花粉は、旭川では飛んでいないため問題になりませんが、シラカバなどの特有の花粉によって悩まされる人は少なくありません。花粉症はくしゃみや鼻水の症状の他に目のかゆみ、充血、めやにも起こります。これらは、アレルギー性結膜炎という状態になっているから起こります。今回から4回にわたって、このアレルギー性結膜炎について説明していこうと思います。

1.アレルギーとは
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 アレルギーという言葉自体はかなり一般的になっており、なんとなく苦手なものや敏感に反応してしまうものをイメージされる方が多いと思います。医学的には、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることをさします。抗原とは異物や外来物のことで、わかりやすくいうと自分の体以外のモノです。免疫とは、この自分の体以外のモノである抗原を排除する働きです。また、自分にとって害のないものには反応せず、有害なモノに対してだけ反応する働きも重要です。言葉にするととても簡単に聞こえますが、この働きはとても難しいことなのです。自分の腕とダニやほこりや花粉は違っていて、見分けるのは簡単だと思いますが、どちらもどんどん小さくしていくと、細胞などの極めて小さなモノになっていきます。そういうレベルでこれは自分の細胞、これは細菌の細胞、あるいは、これは自分にとって栄養になる、これは毒だ、と分けて、自分以外のモノだとわかると攻撃を開始したり、体から出そうとするのが免疫の仕事です。

 アレルギーはこの働きのバランスが崩れた結果、体が過剰に反応してしまうことで起こるといわれております。たとえば、「くしゃみや鼻水」は、鼻に入った花粉や体に入った花粉を外へ出す働きがあり、とても有効な反応ですが、必要以上に起こると、何度もくしゃみが出たり、鼻水がとまらなくなり、日常生活に支障をきたします。このように、外来物に対する正常な反応が必要以上に起こることがアレルギーと考えてよいと思います。

2.アレルギー性結膜炎の症状

 先のアレルギーの話から考えると、たとえば目のかゆみは、花粉やダニの成分がまぶたの内側につき、抗原として涙に溶けます。それが肥満細胞という細胞が見つけて、ヒスタミンという物質を出します。ヒスタミンはケミカルメディエーターと呼ばれ、細胞へ情報を送る物質です。肥満細胞という監視係が花粉を見つけて「花粉が来たぞ!」あるいは「よそ者が来たぞ!」と体や他の器官に伝えようとしているわけです。そのヒスタミンは三叉神経という感覚神経を刺激することで「かゆみ」が起こり、その人は目がかゆくなり何かおかしいぞと気がつきます。(あまりよくありませんが)目をこすって花粉や異物を出そうとしたり、原因が花粉だとわかれば、花粉から離れようとする行動のきっかけになります。

 充血は、血管が太くなり流れる血液の量を増やすことによって起こりますが、これは血液の中にいる免疫細胞をたくさん目に送り込むための反応です。花粉と戦うために兵隊をたくさん戦場(目)に送るために起こっているようなものです。めやにが増えるのも説明ができます。めやには免疫細胞の残骸のようなものです。たくさんの兵隊が犠牲になった「なきがら」のようなものです。異物感はまぶたの内側の変化によるものです。免疫細胞の好酸球や炎症細胞により、かぶれて皮膚がはれるように、まぶたの内側もはれるのと似た変化(乳頭形成)でゴロゴロ感が起こるといわれております。

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