院長の小話

2010年06月21日No.46 白内障について その2 薬物治療

白内障について、小話44で原因や症状についてご紹介しました。
今回の小話は、白内障と診断された場合にどのような治療を行うかについてです。
(手術についての詳しい説明は次号の予定です)。

白内障の診断は、細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)という顕微鏡で水晶体の状態を調べて判断します。散瞳といって、目薬をさして瞳孔を拡げて観察することもあります。

診断がついた場合の治療として、大きく3つに分かれます。

  1. 経過観察
  2. 点眼、内服治療
  3. 手術治療

それぞれを詳しく説明していきます。

1.経過観察

白内障が見つかったからといって、即治療というわけではありません。これは白内障という病気の特徴として、通常の白内障であれば、網膜剥離や緑内障のように治療せずに放置することで不可逆的な(後に治療によっても戻すことのできない)視力障害が残る可能性が少ないことと、手術以外の有効な治療法が確立されていないことと、さらに、加齢が原因の場合は進行具合や視力に与える影響はその人によって様々ということです。

経過観察とは、特に治療せずに定期的に検査を受けて、進行具合の様子をみることです。初期の白内障の場合や、視力が十分保たれており進行がとても緩やかな場合、特に積極的な治療を望まない場合には、検査のみを行います。日常で気をつけることは?と聞かれますが、理論的には紫外線が白内障の原因の一つに挙げられておりますのでUVカットのめがねなどはよいかもしれませんが、有効性の実証データがあるかは不明です。サングラスも瞳孔が大きくなりがちとのことで効果は不明です。読書や目を使うことで進行が早まる報告はなく、その点は気にしなくても良いと思います。

特に、白内障であることをあまり気にせず、普段通りの生活を送ると良いと思います。ただし、検査の時期になったら思い出してください。

2.点眼、内服治療

点眼薬(内服薬)の効果については、実は色々議論のあるところです。

厚生科学研究班の研究による結論としては、現在の薬物療法に関して、十分な科学的根拠を持つ薬物はなく、有効性が明確でないことを説明の上、投与するのが望ましいとの見解が発表されております。しかしながら、現在、処方可能な白内障治療薬は、水晶体のたんぱく質が変化し濁ることを防止する効果が動物や試験管内での実験では証明されております(薬理学的には有効)。

実際の現場でも、点眼を続けている方で白内障が進行せずに喜ばれている方もいらっしゃいますし、点眼することで調子が良いとおっしゃる方も少なからずいるのは事実です。もちろん、点眼しなくても進行しなかったのでは?という批判は考えられますが、「有効性が明確でないこと」はすなわち「無効」ではなく、「有効か無効かわからない」ということですので、今後の臨床研究を待つべきで、他の薬剤がない以上、少しでも有効性が疑われる薬剤を使うことは検討に値すると思います。

当院では、患者さんに
「点眼液は、濁りを取って白内障を治すものではなく、今より見やすくなることはありません。進行を遅くする効果が期待されている薬です。必ず効果が出るとは限りませんが、効果があれば、視力低下の進行を遅らせることができ、将来的に手術をするにしてもその時期を遅らせることができるかもしれません。逆に効果が出なければ、何もしていないのと同じ早さで進行することになります(理論上、点眼したから早く進むような副作用はありません)。あるいは、目の状態によっては点眼しなくてもあまり進行していかないかもしれません。個人差がありますので、進行の早さ、薬の効きについては、わからないのが正直なところです。副作用はほとんどないと考えて良いと思います。さて、どうしましょうか?」

というような内容でお話しすることが多いです。いずれにしても、医師との相談が大切だと思います。


3.手術治療

手術については、次の小話で詳しく説明する予定です。

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